兀狄山人漂泊録 GotutekiSanzin /Minimal Wild /Ultla Light/ネオBライフ/Hermit

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陰翳礼讃 雑感 【雑】【思想】【世捨て】

陰翳礼讃 雑感 【雑】【思想】【世捨て】

檐ノキを深くし、壁を暗くし、見え過ぎるものを闇に押し込め、無用の室内装飾を剥ぎ取ってみたい。それも軒並みとは云わない、一軒ぐらいそう云う家があってもよかろう。まあどう云う工合になるか、試しに電燈を消してみることだ。

 -「陰翳礼讃ライサン」谷崎潤一郎 の 結び。

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「世界には光しか無い。闇とは光の欠如である」
と云うのが、キリスト教的一元論で、
「世界には闇と光がある。」
と云うのが、グノーシス的二元論(光と闇の戦場でもある)だが、

論理的には、もう一つ可能性がある。
「世界の本質は闇であり、光とは闇の欠如である」

菅見だが、最後のものが最も整合的な世界の理解のように思えてならない。
正確には光は闇の欠如ではなく、闇の特殊な様態だろうが。
そもそも、宇宙空間は闇ではないか……

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蝋燭の灯アカリの下モト螺鈿金箔の漆器で晩餐を……、と云うやうな風流で美意識を磨くことも経済的に可能ならばやればよろしい。
が、その前に、知るべきは

真の闇の深さ だろう。

たびたび風餐路宿してはいても、真の闇夜、俗に言う「鼻をつままれてもわからない」闇と云うものは意外に少ない。

雪山で野宿した人は、雪明かりの真の意味、驚くほどの明るさを体験したことがあるだろう。
ライト無しで、十分食事も出来れば、石尾根くらいなら夜道も出来る(明かりとは別な危険があるのでやらないが)。

自然と云うものは、お凡オヨそ、薄暗い 若モしくは 薄明かるい もののようだ。

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数学的には、0 と1の差も、1と 2の差も、100と101の差も同じであるが、生の現場に於ては、0と1の差、いや0と0.0000……01の差でもそれは言語を絶する逕庭ケイテイがある。

有と無は比較すら出来ない。
夜目の利くきかぬはさておきその人なりの、真の闇とは恐怖でしかない。

少なくともワレワレ類人猿にとって、現実の世界とは視覚の世界だ。

……言語が人類の宿痾シュクアなのは間違いないが、その前提に視覚偏重と2足歩行がある。……

陰翳礼讃とは、言い換えれば有と無の境界の 数学的には僅かな差を、感覚的には限界的な絶対領域として引き延ばし、その領域の僅かな差違に全神経を集中し美を玩味する修練だとも言えるのではないか。

 ……(以後の文で、闇を孤独に置き換えてみれば、"陰翳礼讃" はそのまま "世捨て礼賛" になる)……

0 から100万までの雑把な世界を不注意にウカウカと眺めることしか出来ない目と、同じ目をもって0から1までに世界を限定し、その世界を精密に注意深く観察し、美を味わい尽くす目に変えようと云う試みなのだと思う。

(却って解りにくい例えかもしれないが、0~100センチまで1センチごとに100の目盛のある物差しを捨てて、0~1センチまで0.1㎜ごとに100の目盛の物差しを使って世界を測るような……100の目盛とは、人間の持ち合わせた能力のことだ……)

だから、その前に、必須の準備として是非にも 真の闇の恐怖を知るべきだろう。

間違えないように。
ワレラの故郷が、闇が、孤独が恐怖の源泉なのではない。
ワレワレは自らの故郷を恐怖と感じる倒錯に生きる、言語と云う病に冒されている、狂気の生き物なのだ。

闇の恐怖をまず知り、恐怖にどっぷり浸かって、やがて闇に馴れ親しむ……

世界の本質は闇なのであり、
たまたまワレラ人類は、闇の欠如に蝟集イシュウし盤踞バンキョする異形の生き物なのだ。

世界と神に近づく為には、光を細くして自然に帰り、闇に、孤独に、死に親しむべきなのだ。
失われた連続性。を常に思い、闇と死と無に憧憬と郷愁を呼び起こすべきなのだ。

何故なら、ワレラもまた、異形とは云え、世界ノ内の存在であることからは免れないのだから。
狂気にまみれたワレラの中にも、至高なるもの(グノーシス的に言えば)、仏性(ホントハ少シ違ウ…)のようなものが確実に存在する。

これは、証明不要の自明な事柄なのであるが、何故自明かを説明するとスピノザの話になり長~くなる。
(マッそれに、いずれは、故郷に戻るのだし……)

とまれ(=ともあれ)、
陰翳礼讃 は、ひ弱な文人趣味、老人趣味だが
自然回帰 と云う視点から見れば
野宿礼賛 と根は同じくしている。 

陰翳礼讃派は、野に出でては如何か?
野宿派は、も少し美意識を磨いては如何か?

自らの罔兩モウリョウ(うすかげ)に問いかける、大雨の夜であった。
___ ナンチャッテ(((^_^;) ネ